トピックス
労働問題(事業者向け)
2021/6/23
過労死認定基準見直し

厚生労働省は、過労死認定基準を20年振りに見直す模様。現行では「直近1カ月で残業100時間超」「2~6カ月間平均で月80時間超」に達する場合は業務との関連性が高いなど労働時間が「過労死ライン」に達しているかどうかが主な判断基準とされている。労災の認定基準の見直しの概略としては、過労死ラインに達しない労働時間でも「これに近い残業があり他の業務負荷が認められたら、業務と発症の関連性が高いと判断できる」とすることや、他の業務負荷としては、拘束時間が長い勤務、休日のない連続勤務、終業から始業までの「勤務間インターバル」が短い勤務が挙げられている。勤務間インターバルも今後の労働時間の管理において重要性が増してくるものと思われます。参考記事はこちらを参照⇒過労死認定基準見直し

2021/5/5
2021年4月からの改正労働法

中小企業の経営者に向け高齢者雇用及び同一労働同一賃金について簡潔に解説しました。こちらを参照してください。⇒2021.4月から施行の改正労働法(対中小企業)

2020/3/29
2020年4月からの賃金債権の消滅時効

2020年3月10日の記事:昨年末まで労政審で今年4月からの施行される改正民法との関係で、従来の労基法に基づく賃金債権の消滅時効(現行2年)をどうするかについて、労働側は改正民法に合せた5年、使用者側は現行維持2年を主張していたところ、タイムリミットが迫った今回、政府は、現行の2年から原則5年へ、ただし当面は3年とする法案を国会に提出することになった。2025年以降は原則の5年に延長される可能性がある。関連記事はこちらを参照⇒賃金消滅時効延長

追加記事:2020年3月27日、改正労働基準法が成立し、賃金債権の消滅時効期間を当面3年とした。

この改正法の施行は、改正民法の施行に合わせて2020年4月1日からとなるが、適用対象となる賃金債権自体も2020年4月1日以降に発生するものからとなる。すなわち、今年4月以降(例えば4月1日)に未払い賃金等を裁判手続で請求した場合、2020年4月から遡って3年前の2017年4月以降の賃金債権を時効にかからないものとして請求できるわけではなく、あくまで2020年4月1日以降発生した賃金債権から時効消滅が3年に伸びたということになる。言い換えれば、2020年3月31日までの発生賃金は、依然として2年の消滅時効にかかる。

まるまる3年分請求できるのは、2023年4月以降ということになる。

2020/3/14
労務管理セミナー「働き方改革下の労働時間の管理」(動画掲載その3)

「働き方改革下の労働時間の管理」という命題で行った労務管理セミナーの動画ですが、そのうちの導入説明部分になります。こちらをご覧ください。⇒「働き方改革下の労働時間の管理」導入説明

2019/11/7
運送事業者に向けた労働時間管理規制

働き方改革による法規制が施行されるようになる中、運送業を営む企業にとってトラックドライバーの労働時間をどのように管理して行くべきか。従来の法令規制と今般の働き方改革関連法の両面から解説を試みました。こちらを参照⇒トラック運送事業と働き方改革関連法(要点)

2019/9/22
労務管理セミナー「働き方改革下の労働時間の管理」(動画掲載その2)

先(7月)に公開したセミナーの続きです。先の動画が、総論的な内容なのに対し、こちらは、実例を交えた各論的な内容です。こちらをご覧ください。⇒働き方改革下の労働時間の管理(その2)

2019/7/7
労務管理セミナー「働き方改革下の労働時間の管理」(動画掲載)

昨年秋に実施した労務管理セミナーの一部動画です。こちらをご覧ください。⇒働き方改革下の労働時間の管理

2018/12/13
非正規雇用者の労務管理(パート、バイト、契約社員を中心に)

雇用の流動化が一般化し、人手不足の今日、事業者は、労働力不足を、パート、アルバイト、契約社員さらには派遣社員といった非正規雇用者で補ってゆく必要が生じています。このような非正規雇用者についても、正規雇用者とともに労務管理をするには、一定の知識をもって適正に対処することが求められます。主な留意点を中心にまとめてみましたので、次の記事を参照してみてください。参照記事はこちら⇒非正規雇用者の労務管理

2018/9/12
残業代定額手当に関する最判(H30.7.19)

1 事案の概要

㈱日本ケミカルの薬剤師として勤務していた正規従業員が、会社に対し、時間外労働、休日労働及び深夜労働(以下「時間外労働等」)に対する賃金並びに付加金等の支払を求めた事案

2 事実関係

就業時間が ①月曜から水曜までと金曜日で、AM9:00~PM7:30まで、休憩時間はPM1:00~PM3:30までの150分、②木曜と土曜はAM9:00~PM1:00まで。

契約書には、賃金につき、「月額562,500円(残業手当含む)」、「給与明細書表示(月額給与461,500円 業務手当101,000円)」とあった。同様に、雇用契約採用条件にも「業務手当101,000円 みなし時間外手当」、「時間外手当は、みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない」との記載があった。賃金規程にも「業務手当は、一賃金支払い期において時間外労働があったものとみなして、時間手当の代わりとして支給する。」とある。

会社は、上記従業員以外の各従業員との間で作成された確認書に「業務手当は、固定時間外労働賃金(時間外労働30時間分)として毎月支給します。一賃金計算期間における時間外労働がその時間に満たない場合であっても全額支給します。」などと記載されていた。

会社は、タイムカードを用いて従業員の労働時間を管理していたが、タイムカードに打刻されるのは出勤時刻と退勤時刻のみであった。本件従業員薬剤師は、H25.2.3以降は、休憩時間に30分間業務に従事していたが、これについてタイムカードによる管理がされていなかった。毎月の給与支給明細書には、時間外労働時間や時給単価を記載する欄があったが、全ての月において空欄であった。

3 原審(東京高裁)の判断(労働者の請求の一部認容)

「定額の残業代の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことができるのは、定額残業代を上回る金額の時間外手当が法律上発生した場合にその事実を労働者が認識して直ちに支払を請求できる仕組みが備わっており、これらの仕組みが雇用主により誠実に実行されているほか、基本給と定額残業代の金額のバランスが適切であり、その他法定の時間外手当の不払や長時間労働による健康状態の悪化など労働者の福祉を損なう出来事の温床となる要因がない場合に限られる。」

「本件では、業務手当が何時間分の時間外手当に当たるのかが(本件従業員薬剤師)に伝えられておらず、・・・(会社)が被上告人の時間外労働の合計時間を測定することができないこと等から、業務手当を上回る時間外手当が発生しているか否かを(本件従業員薬剤師)が認識することができないもであり、業務手当の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことはできない。」とした。

4 最高裁の判断(原審破棄、差し戻し)

「・・・労働者に支払われる基本給や諸手当にあらかじめ含めることにより割増賃金を支払うという方法自体が直ちに(労基法37条)に反するものではなく、使用者は、労働者に対し、雇用契約に基づき、時間外労働等に対する対価として定額の手当を支払うことにより、同条の割増賃金全部又は一部を支払うことができる。」

「雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは、・・契約書等 のほか、具体的事案に応じ、・・判断すべきである。しかし、・・・原審が判示するような事情が認められることを必須のものとしているとは解されない。」(中略)「したがって、上記業務手当の支払により(本件従業員薬剤師)に対して労働基準法37条の割増賃金が支払われたということができないとして原審の判断には、割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。」

5 解説

(論点)定額残業代が、それをオーバーして時間外労働をした従業員に対する割増賃金に充当されるかどうか。

高裁は、本件業務手当につき、詳細な事実認定をして、充当についての一定の規範を定立している。

最高裁は、この高裁の規範定立が厳格に過ぎるとして、原審判断を破棄している。

(整理)これまでも残業に関する定額手当が割増賃金の支払として認められるには、まず、当該手当が何時間分の時間外手当に当たるのかが明確になっていなければならないとされていたことが労働事件処理の実務上一般的であった。高裁の上記判断にもそのことが判断要素として真っ先に示されている。

おそらく、この点までは、最高裁も上記判断の中では否定するものではないものと思われる。

要は、それ以外の高裁でさらに会社における当該手当についての労働者が金額を特定して請求できる仕組みであるとか、その余の比較的詳細に規範定立した要件まで厳格に満たさないとダメということには必ずしもならないとしているところが注目される。

最高裁は、具体的事案に応じ、・・・として、

「使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべき」としている。

高裁の要件よりももう少し柔軟に判断すべきということかと思われる。

いずれにせよ、事業者としては、定額残業手当を規定する場合には、それが何時間分の時間外労働のものか、そして、定額にしておいて、従業員の労働時間管理(残業状況の管理)を怠ることのないように気を付けなければならない。使用者の労働者に対する労働時間管理をしっかりすることは労務管理の基本と心がけるべきではないでしょうか。

以 上

2018/7/11
勤務間インターバル

安倍政権下、「働き方改革」関連法案が議会を通過し、立法化された。法案の肝となる高度プロフェッショナル制度の適用対象職種や年収は省令や指針へ譲られ、この秋以降さらに労働政策審議会で議論されるらしい。これとは別に、同法案で導入を努力義務とした労働者の「勤務間インターバル」についても注目されている。厚労省の調査(H17年)では、わが国で導入されている企業は、1.4パーセントにとどまるという。そして、最近の総務省の発表によると終業から始業までのインターバル時間が11時間以下の労働者の割合が10.4パーセントにのぼるという。政府としては、この勤務間インターバルを企業に拡大定着させたいところと思われるが、旗振りだけでは、労務管理が難しいとして積極的に導入する企業は少ないのではなかろうか。厚労省の助成金制度にも項目として勤務間インターバル導入への助成金があるものの、実際に利用しようとすると、ものすごく利用勝手の悪い制度と言わざるを得ないところも見受けられる。また、最近では、労働基準監督署による労働時間を中心とした企業の管理状況を担当監督官が定期監督と称して臨検調査にあたり、不備が見られると是正勧告をするようだが、助成金と是正勧告といったいわゆる「アメとムチ」による政策には限界があるというべきである。企業の自主的導入のメリットが必要ではなかろうか。

当事務所では、中小企業をターゲット顧客として、労働時間の管理についての助言・指導を行っている。残業の野放し状態などは、企業にとっても人件費がかさむ経営効率の悪化につながるものゆえ、積極的に就業規則の改定、新しい労働時間管理手法などの導入により労働者にとっては健康面に配慮した、企業にとっても残業、休日出勤を必要なものに限った労務管理をすることは、上記自主的導入につながるものと言えよう。